二人なら何でも出来ると夢を見ていたあの頃。
其れは幸せで傲慢な唯の夢だと知った今、二人の前に横たわるのは愛と言う名の屍。
それでも幸せだった頃の思いは消えないと、けれど消えないからこそ苦しくなる。
貴方を愛している。
その言葉まで嘘に聞こえるようになってしまったら、一体何を信じればいいんだろうね?
世間に負けたと、苦笑するのは簡単だけど。

「けどもう、離れてなんて生きていけない」

腕の中の君は諦めたように呟いて、ふっと僕では無い虚空を仰ぐ。
その虚空にすら嫉妬する僕に、君は疲れてしまったのだろうか?
少なくとも僕は疲れてしまった。君という存在を手に入れたときから、離れることの無い不安に。

「離れられないなら一緒に居よう」

何度繰り返したか判らない言葉に、君は何度繰り返したか判らない頷き。
一緒に居よう。其れだけが僕らの出来ること。
君のためにでも僕のためにでもなく、唯離れられないから。
傲慢といってくれても構わないよ、けれど君はもう僕と離れては生きていけない。
そして僕も、君と離れてまで生きたいと思わない。

一緒に居るという唯それだけで、随分僕らは弱くなった。
けれど其れを強くなったと表現することが、愛という言葉を用いれば出来るよ。
だから僕はこれをあえて愛と呼ぼう。
もう屍となってしまった愛だけれど。

どんどん冷えていく部屋で愛を弔おう。
僕と君とで育んできた愛を。
そうすれば僕らはきっと報われる。
そうすれば僕らはきっと救われる。
傲慢な夢の中でまだ生きていける。

君は僕の腕の中で静かに目を閉じる。
僕はその細く骨ばった腕を取って口付ける。
緩慢な愛撫と、忘れ去られた温もり。弔った愛とともに、今君の元に戻る。
そしてもう一度、この儀式のために愛を育てて。

君は僕の腕の中で眠る。
僕は君の頬に口付ける。
永遠に続く遊戯のように、さぁ。

離れられないという理由だけで一緒に居るなんて間違ってるって。
そんなことは判っている。でも、それでも結局離れられないのは。

そこに愛というものが在るからだと思ってもいいだろう?

君は僕から離れられない。
僕は君から離れられない。

だから一緒に、どうか、お願いだから。

愛を弔おう。





Fin














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