Sea's the sky

                 亜月有    



私の好きな人は、雨の降る夜、死んだ。

――事故死、だった。  

車での走行中、対向車の居眠り運転による正面衝突。  
海沿いの細い道路で、どうしようもなかったのだろうと、警察は言った。

家族四人、久し振りのドライブ。  
でもそれは、事故によって終わりを告げた。    

三名、死亡、一人、行方不明。  

楓 以外――両親と妹は、しばらくしないうちに海から遺体が引き揚げられた 。  
でも、楓の遺体は何故か見つからなかった。三ヶ月経って、捜索は打ち切られた。  

生きているのではないかと、言う人もいた。  
何処かで奇跡的に、助かっていると。  

でも私は楓の死を確信している。  
だって私は、楓を好きなのだから。    

私は今、楓の乗った車が突き破った、その場所に立っている。  
切り立った崖。ココから落ちる間、楓は何を思ったのだろう。  
私はしばらく立ったままその景色を眺めて、それから首から十字架のネックレスを外した。

――安物で、ごめんね。  

楓はそういって、私にそれをくれた。
楓がいつもつけていた物とペアのデザイ ンのネックレス。  

私はそれを、海へ向かって遠くへ投げた。  
耳を澄ましていたけれど、海へ落ちた音は聞こえなかった。

――ねぇ、楓。私はどんなに安物でも、このネックレスが大好きだったよ。

だって、貴方のくれたものだから。  

このネックレスが、目の前に広がるこの海の何処かに眠っている楓に届けばい いと思う。  

それから、私はそっと手を合わせた。  


三ヵ月後。或る海岸で 人のようなものが発見された。  
それは二つのものを身に付けていた。    

男物のネックレスと、それから。                         






End







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