彼らのHOLY X’MAS



人物。

<A:少女。少女とAは同じ人がやることを推奨。>

<B:人。喋りは今のところ男だが男である必要は特になし。>

<妖精:妖精。>



BGM「彼らのHOLY X’MAS」と共に幕開き。

下手側のみ照明。



A:雪が降ったら逢いに来ます、貴方はあの時確かにそう言いましたね。今日、雪が降りました。今年初めての、雪です。雪が降りました。ほんの僅かでしたが、確かに、雪は、降りました。逢いに来てください。逢いたいです。逢いたいんです。

…そっちではまだ雪は、降ってはいないのですか。此処では確かに雪が、降りました。雪が降りました、だから…逢いに来てください。逢いに来て下さい。

独りの雪の日は淋しいんです。逢いたいんです。どうしても、どうしても、どうしても……

……雪が降りました。

…逢いに、来て下さい。



BGM、F.O.

下手の照明オフ。

上手側のみ照明。



B:12月20日未明、交通事故がありました。乗っていた家族4人のうち、一人は奇跡的に助かりましたが、他はほぼ即死の模様です。



暗転。



全体に照明。

クリスマスの音楽。

舞台の中心に机。下まで届くテーブルクロスがかかっている。正面を向き、椅子に座って漫画を読んでいる少女。



声:ピンポーン♪お届け物でーっす!



少女、溜息を吐いて立ち上がり上手側に退場。

テーブルクロスが僅かに動き、中から人(?)が顔を出す。客席に向かって笑い、手を振る。少女が手に箱を持って戻ってくる。人(?)慌てて顔を引っ込める。



少女、箱を机に置き、椅子に座り、また漫画を開く。

と、訝しげな顔になる。テーブルクロスが動く。



人(?/B):いたっ!

少女(A、以下少女):…なんか、足に当たるなあ…



少女、更に蹴る。



人(?):いたっ…痛い!痛いよっ!!!

少女:何…何かいるのっ!?



立ち上がり、思いっきり蹴りを入れる。人(?)が転がり出てくる。



人(?):ぎゃぁぁ!!…いったぁ〜〜〜

少女:!!!ちょっとぉ!!?な、何なのあんた!!?



人(?)、辛そうに立ち上がる。服装を整え、深呼吸。

そしてやたら堂々と言う。



人(?):僕は妖精です!!!

少女:…はぁ?

妖精(B、以下妖精):僕はクリスマスの妖精!!

   (一歩前に出て、片手を上げ)クリスマスの夜…

(もう一方の手も上げ)一人きりの淋しい少女の魂を…

   (ばっと少女の方を向き、両手を差し出して)…救いに来たんです!!!



少女、携帯電話を取り出す。



少女:もしもし警察ですか?何か家に怪しい人が…

妖精:嫌ぁぁやめてぇ!!僕は怪しい者じゃない!!



妖精、言いながら携帯を盗って切り、机の上に投げる。



少女:人んちの机の下から出てくる奴の、何処が怪しくないのよ!?

妖精:うっ…

   僕は怪しくない!!怪しくないんだぁぁぁぁぁ!!

(駄々っ子のように手をばたばたさせる)



少女、バン、と音を立てて机を叩く。妖精、黙る。少女、椅子に座り、大きく溜息をつく。



少女:…帰って

妖精:え?

少女:邪魔だからとっととどっか行って。あたしは別に淋しくないから



言い放ち、漫画を開く。妖精、うろうろ。



妖精:……あのお…

少女:帰って。

妖精:……あの…話し相手とか…

少女:帰って。

妖精:愚痴でも聞きますから…

少女:帰って。



妖精、うろうろ。少女、痺れを切らしたように漫画を音を立てて閉じて。



少女:……ピー、これは警告です。(ぉぃ)

   最終通告よ?じゃないと本当に警察呼ぶから。

妖精:……でも、…でも、そういうわけにも行かないんです。成功報酬なんですよ!!

少女:は?



妖精、何処からか電卓を取り出す。



妖精:(電卓をはじいて)これが基本給で、(少女に見せる)で、成功すると…(電卓をはじく)…此処まで上がるんです!!ね、大分違うでしょ?

少女:……(携帯を机の上から取り、リダイアルボタン。)

   もしもし警察ですか…

妖精:(携帯奪い)だからやめてってばぁ!

少女:人を金儲けの道具にしないでよ!

妖精:それが仕事なんですから!!

少女:……どういうこと?

妖精:…それは…しまった喋りすぎた…

少女:…ど・う・い・う・こ・と?

妖精:…企業秘密です!

少女:はいそこに座る!!!

妖精:はい!!?



少女、床を指差す。妖精、思わず正座。



少女:さあ、洗いざらい吐いて楽になっちゃいなさい?

妖精:…黙秘権を行使します。

少女:じゃあやっぱり警察に…

妖精:ああ嘘ですすいません吐きますぅ



妖精、観念したように、正座のままで言う。



妖精:あのですね、俺は妖精です。そこだけ、信じていただけますか?

少女:え、無理。

妖精:信じてくれないと話になりません…(泣)

少女:…じゃあ信じたことにしよう。

妖精:そうそう、柔軟性大事です!

少女:煩い、さっさと吐け

妖精:もっと可愛い言葉遣いできなんですか…

少女:(携帯取り出し)

妖精:ああ嘘ですすいません吐きます!あのですね、俺たちはサンタの手下なんです。

少女:………は?

妖精:サ・ン・タ・の・て・し・た!!サンタを信じなくなった輩に、クリスマスの幸せを与えるのが俺たちの仕事なんですよ。サンタのお情けって訳です。

少女:………サンタ…手下ぁ?

妖精:イエス。サンタだって色々忙しいんですよ。

それに、人がサンタを忘れるとサンタは死んじゃいますから。

少女:……え?

妖精:(立ち上がり)サンタのエネルギーは、クリスマスの朝の子供たちの笑顔なんでだから、サンタは人に存在を忘れられるわけにはいかないんです!(物凄く熱心に)

少女:……そんなこと言ったって……結局サンタなんて何もやらないじゃん。

あれは子供の親が…

妖精:しーーーーっ!!!(少女の口塞ぎ)子供の夢を壊しちゃいけません!!

少女:(妖精の腕を振り払い、一歩前に出て、芝居がかって)夜僕が目を覚ますと人影…思わず「サンタさん!?」と叫ぶと振り向いたのは…見間違えようも無い僕のお父さん…

妖精:だから、子供の夢を…;;

少女:こうして少年は大人へなっていくのよ…(うっとり)

妖精:……そうして貴方は、大人になっていったんですか?



少女、驚いたように妖精を見る。

BGM、鈴の音。少女、ふと舞台の奥を見て。



少女:……雪が降ってきたみたい。

妖精:ホワイトクリスマスですね。

少女:………皆この雪を見てるよね。独りで、それとも二人で、大勢で?

妖精:貴方は独りじゃありませんよ?

少女:妖精は一人っていうカウントなの?

妖精:それを言わないで下さいよ………それに、細かいことはどうでも良いんです。



BGM、大きくなり、やがてF.O.



少女、椅子に座り漫画を開く。



少女:…さあ、今度こそ帰って。あたしは大丈夫だから

妖精:え、でも…

少女:あたしは貴方のこと忘れない、それで充分でしょ?

妖精:……はい。…でも

少女:まだ何かあるの?警察呼ぶわよ、ホントに。

妖精:………判りました、帰ります。

   …でも、…貴方はまたきっと、今日よりもっと、淋しくなりますから。淋しくなったらまた、来ます。

少女:あたしは平気だって。…じゃあ。

妖精:…淋しくなりますから。きっと。…じゃあ…また。

少女:…さよなら。



妖精、上手へ退場。少女、漫画を閉じ、箱を手に取り、たちあがって下手側に歩きながら。



少女:寒い夜…独りの夜は速く寝てしまうに限る…

   (箱を見詰め)…馬鹿みたい…死者からの贈り物なんて。

   …お休みなさい、そして、メリークリスマス。



 少女、舞台の電気を全て消す。退場。



真ん中にのみ照明。

白いシャツに深紅の汚れをつけた人物(B)が、机に寄りかかり、身体を投げ出すように座っている。

下手側から、傘を差した人物(A)が登場。

A、Bを発見して、一度立ち止まる。辺りを見渡してから、おそるそる近付く。



A:……あの、



B、無反応。



A:…あの、大丈夫ですか?



B、Aを見る。A、一瞬怯むが、続けて。



A:あの、…それ、血ですよね?…怪我しているんじゃ…

B:返り血だ。



A、思わず一歩はなれる。B、無言。

A、気を取り直してもう一度近付く。



A:…あの、…雪降ってますよ。風邪ひきますよっっ??

B:……なんなんだお前は…?

A:通りすがりの者でっす!

B:……邪魔だ。去れ。

A:……誰か殺したの?

B:……だったらどうする?

A:別に。

B:…俺はお前も殺すかもしれないぞ?

A:別に良いもん。

B:……面白いことを言うな。殺されても良いと?

A:うん。

B:……これは返り血だ。

A:その人死んだんだよね?

B:…多分な。

A:じゃあ貴方は人殺しだね。…今日はクリスマスなのにね。

B:……なんでいきなり…

A:今日はクリスマスなのに、人を殺したあなたと、殺された誰かが居るんだよね。

B:…別にクリスマスなんて関係ないだろう。

A:無いかな?

B:無いさ。

A:……誰を殺したの?

B:……何故そんなことを聞く?

A:殺されたいから。

B:…親友さ。

A:友達を殺したの?

B:いや、親友だ。

A:どうして。

B:…親友だったからさ。

A:ふうん。

B:納得するのか?

A:判んないけど、貴方がそう言うんだったら、そうなんでしょ?

B:……そうだな。

A:…ねえ。風邪ひくよ。雪が積もってる。

B:雪か。

A:雪だよ。

B:もう雪が降るんだな。

A:何言ってるの、もうずうっと前から降ってたよ?

B:……雪は降っていたんだな。

A:そうだよ。

B:…逢いに行かなくてはな。

A:誰に?

B:待っている人に。

A:誰かが待ってるの?

B:ああ。

A:人を殺した貴方を?

B:……さぁな。

A:…行ってあげなきゃ駄目だよ。

B:……どうして。

A:待ってるんでしょ?

B:どうかな。

A:待ってるよ。

B:……俺を?

A:貴方を。

B:……でもまだ、雪が降らないから。

A:何言ってるの、降ってるじゃん。

B:降らないさ。

A:降ってるよ。

B:降らないさ、……まだ、逢いには行けないんだから。

A:降ってるから、…逢いに行ってあげてよ。

B:………



A、Bに傘を無理矢理持たせる。



B:…要らない

A:駄目。貴方はこれを持って、その人に逢いに行くの。



A、言い置いて上手側に駆けていく。

暗転。



下手側のみ照明。A。

A:24日、深夜。いや、既に25日か。

  アパートの一室で、死体が発見される。鋭利な刃物による刺殺。凶器は不明。犯人は大量の返り血を浴びている物と思われる。被害者の身元は不明。10代後半から20代前半の女性。背が高く細い体付き。



上手側に照明。B(血の付いていないシャツ)



B:(上手から走ってきて)!?何をやってるんだ?…自殺?馬鹿なことをするな、何で死ななきゃならないんだ。…止めろ、そのナイフを離せ!やめろぉっ!!!!



暗転。

上手側に照明。B(血の付いたシャツ)



B:…なんなんだ…どうしてなんだ?止めてくれ、やっと、やっと逢いに来たのに!!

 …え?遅すぎた?どうしてもっと早く来てくれなかったのかだって…?

 …止めろ、止めてくれ、死なないでくれ!!!



暗転。

真ん中のみ照明。椅子に座るB。



B:確かに俺は彼女を殺した。凶器はあのナイフ。…え?動機?……言いたくない。どうでも良いじゃないか、動機なんて。ともかく俺は彼女を殺した。



下手側に照明。



A:…何で殺したんですか?

B:言いたくない。

A:どうやって殺したんですか?

B:…あのナイフで。

A:指紋は在りませんでしたよ?

B:…手袋をしてたから。

A:なんで凶器を持ち帰ったのですか?

B:証拠が残るのが嫌だった。

A:じゃあ何で自首したんですか?

B:罪の深さに気付いたから。

A:凶器に被害者の指紋が在ったのは何故ですか?

…本当に貴方は、彼女を殺したのですか?

B:確かに俺が殺した。

A:…彼女は自殺ではないのですか?

B:………

A:自白のみでは証拠になりません。

B:…返り血が。…凶器も。

A:貴方は彼女の自殺に居合わせたのですね。

B:違う。俺が殺した!

A:彼女の部屋から遺書が発見されました。貴方の容疑は証拠隠滅と自殺扶助です。

B:違う!俺が殺した!!!



暗転。





   少女、下手側から眠たげに登場

少女:おかーさん、なんでおこしてくれなかった・・・

はっと気付いて。

少女:馬鹿みたい・・・

   馬鹿みたい馬鹿みたい馬鹿みたい馬鹿みたい…!!!誰も!もう誰もいないのに!

妖精:(上手から登場)淋しくなったでしょう?



少女、驚いて妖精を見る。



妖精:約束どおり…逢いに来ました

少女:貴方に何が出来るの!

   判ってるのよ!私の一番の望みは手に入らない!!

妖精:そうですね、僕にはそれは出来ない

少女:帰って!

   何も出来ないくせに何でここにいるの!?帰って!帰ってよ!!

妖精:帰りません

少女:帰って!

妖精:嫌です!

   ………今日は…クリスマスなんです。どんな奇跡も…起こりうると思いませんか?

少女:奇跡…

妖精:…例えば、…例えば貴方の家族

少女:(遮る)それは嫌!

妖精:………奇跡をあげます。貴方に、奇跡をあげます。

   だから…………



照明、薄暗く。

傘を持って、Bが下手側から歩いてくる。Aは上手側から。

B、Aに気付く。



B:傘、有難う。

A:逢いに行ってあげられた?

B:逢えなかった。

A:え?

B:俺が殺したから。

A:……え?

B:俺が殺したのは、その待っていてくれた人だ。

A:……何で、…殺したの?

B:…死ぬのを止められなかった。

A:え?

B:遅かった。逢いに行くのが。その人は死んでしまった。

A:…自殺?

B:……そう。

A:……取り残されたの?

B:ああ、独りきり。

A:……あたしも。独りきり。…クリスマスなのにね。

B:…クリスマスなのに。

A:…あたしを殺してくれないかな?

B:嫌だ。

A:何で?

B:人の死は見たくない。

A:……そうだね。…淋しい?

B:…淋しいよ。

A:妖精が来てくれるよ。

B:妖精?

A:そう。クリスマスに淋しい人の所に、来てくれるよ。そして、奇跡をくれる。

B:…お前がその妖精か?

A:違うよ。…淋しくなったら来てくれるって、言ったの。

B:その妖精が?

A:そう。

B:…淋しいのか?

A:ううん、淋しくないよ。奇跡に逢えたから。

B:……クリスマスだから?

A:クリスマスだから。

  …ねぇ。家来る?

B:え?

A:淋しいんでしょ?





暗転。

照明、舞台全体に。



B:(声のみ)いいのか、見ず知らずを家に上げて…?

A:(声のみ)いいの、此処はもうあたししかいないから。

B:…え?

A:みんな事故で死んだの、だからいいの。あなたも一人なんでしょ?

  …あ、ちょっと待ってて

A:オーケイ!入ってきてv

B:おじゃましま…

A、突然クラッカーを鳴らす。

B、無言で戸を閉め帰ろうとする。

A:あ―――待って御免なさい行かないで―――!!!(Bの腕掴み)

B:…何のつもりだ…(引き摺られ)

A:…いーじゃない、クリスマスなんだから!!

B:………それで全部片付けるか…

A:うん。…あ。ツリ−出さない?クリスマスツリー。

B:…クリスマス…ツリー?

A:そう!



A、Bを引き摺って下手へ。



(声のみA)そう、その上の!!ってあんた埃塗れ〜

(声のみB)誰のせいだ誰の…



ツリーと飾りを持ってでてくる二人。



A:やっぱりこれが無いとね。

B:初めてだな、こういうの

A;・・・初めてなの!?



(適当に会話しながら飾りつけ。BGMとともに幕下り。)




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